夏休み子ども科学電話相談を聴いて少年時代に思いを馳せた

 

 

「せかいはあさからはじまったの?」

「どうしてそれを質問してみようと思ったの?」

「おそらをみていておもいました」 

 

 

夏休み子ども科学電話相談というラジオをご存知だろうか。連日放送時間にはTwitterのトレンド1位に浮上する、NHKの夏休み限定のラジオ番組だ。

 

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知ってる人も多いと思うが簡単に説明すると、日本全国のちびっこの科学に関する質問に対し、直接専門家の先生が答えてくれる、そんな科学が大好きなちびっこにとっては夢のような番組だ。

 

 

「からあげでせいざはつくれるんですか???」

「どうしてむしのびょういんはないんですか???」

「どうやったらどうぶつとおはなしできるんですか???」

 

なんていうちびっこらしい可愛い質問から、めちゃめちゃ恐竜に詳しい恐竜ボーイや、いろんな惑星を知り尽くしている宇宙ボーイまで、いろんなちびっこが先生に質問をぶつける。

 

先生たちだって本気だ。「ガス」が分からないい4歳の女の子にガス惑星の木星の成り立ちをなんとか説明したり、動物に心はあるのかという質問に対して「まずは君が心というもの定義しなくてはならない」とビシッと本質を突いてきたり。大人と子どもが本気でぶつかり合う。先生のはしゃぎっぷりや訛りもクセになる。

 

アナウンサーの人もすごい。緊張でなかなか話し出せないちびっこに優しく語りかけ、ちょっとわかりにくい質問には「これはこういうことかな?」と聞き直す。

 

僕はちびっこに弱いのでこの夏休み子ども科学電話相談を聴くとうるっとしてしまう。

 

「こんじちわぁ」ってやっと話せるようになったくらいの子が出てきたり、「おはようございまああっす!!!」とつんざくばかりの大声を出すわんぱくキッズが出てきたり。そのちびっこ感に涙腺がやられる。

 

そして毎回ちびっこたちの好奇心に驚かされる。特に夏休みということもあり、ちびっこからは昆虫に関する質問が多く寄せられる。

 

「どうして虫を潰すと汁が出るの?」とか

「どうして虫の病院はないの?」とか。

 

ちなみにこの二つには先生が「君を潰しても汁が出る」「虫はすぐ死ぬからや」とズバッと答え伝説回として有名になっていたりするんだが、とにかくみんな昆虫が大好きだ。

 

 

 

 

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思い返せば僕も虫が好きだった。

小学生のころ、本当に毎日虫をとって遊んでいた。夏になればカブトムシやクワガタを捕まえて飼っていた。今でも玄関においた虫籠から腐葉土と昆虫ゼリーが混ざり合った甘い土の匂いを覚えている。

 

夏が終わればカマキリに夢中になった。僕は他にもバッタやカナブンや、他にもカエルやマイナーなところだとハサミムシを飼っていた。しかし中でもひときわ夢中になったのはカマキリだった。

 

あの独特なフォルムに三角に顔、そして鋭い鎌。いざとなれば飛ぶことだってできる羽だってある。いわば昆虫界のスーパーマンだと思っていた。

 

しかしカマキリはなかなか見つからない。よく近くの空き地の草むらに分入って、草まみれになりながらやっとの思い出捕まえていた。

 

彼らの餌は他の小さな虫だ。バッタや蝶を学校からの帰り道で捕まえてはカマキリに与えていた。特にシジミチョウを捕まえるのはお手のもので、右手で捕まえたそれを左手の指と指の間にはさみ、一気に五匹捕まえてくることもざらだった。

 

そして季節は流れ冬のある日。カマキリが卵を孕んだらしく、お腹がパンパンに膨らんでいた。二匹飼っていたのだがどうやらオスとメスだったらしい。

 

そして数日後、彼女は卵を産んだ。

この光景を今でも覚えている。朝、学校に行く前に虫籠を覗くとメスがオスを食べながら卵を産み付けているではないか。カマキリは出産すると絶命する。そいてその出産にはとてつもないエネルギーが必要なため、オスを食べて補うことが多いのだ。図鑑で読んでいて知っていたが、まさかそれが本当に起きるとは。目の前で繰り広げられる命の連鎖に釘付けになった。

 

一方は卵を作った相手に食われ死にいき、一方は新しい命を生み出しながら最後の力を振り絞っている。そしてその腹は脈打ち、白いふわふわとした卵が少しずつ出てき、綿あめのような塊ができていた。

 

夕方、学校から帰るとオスは食いちぎられた腹を上にして、メスは出産を終え力つき、壁から落ちて横たわっていた。その上にはすでに乾燥して硬くなった新たな命の塊が、どっしりと虫籠の壁に張り付いていた。

 

僕はこの光景が怖かった。死骸に触れるのがとても不気味で、虫籠を開けるのが怖かった。あんなにいきているときは触っていたのに、どうして死ぬとこうも気味が悪くなるんだろう。

 

ほとんど親に手伝ってもらって彼らを埋葬した。今となればとても迷惑な息子だったと思う。思い返せば飼っていた虫が死ぬと、ほとんど親に処理を手伝ってもらっていた。

 

昨日まで愛情込めて育てたカブトムシが硬くなってひっくり返っていたり、メダカが水の上に漂っていたり。そういう突然の変化が怖く、死んだという現実を受け入れられなかったのだと思う。

 

やがてカマキリの卵は孵化し、何百匹もの幼虫が生まれた。カマキリの幼虫はすでに成虫の形をしているちっちゃいカマキリだ。彼らの大きさに比べると虫籠の隙間は通れるほど余裕があり、学校から帰ると庭に置いてある虫籠から彼らがぞろぞろと出て行くのが見えた。

 

せっかく孵化させたのに逃げてしまう。そう思って駆け寄ったが、よたよたと庭の茂みに駆けていく彼らの姿をみて自然に返そうと決めた。きっとこんなに小さいと僕の手では育てられない。親カマキリが命がけで残した命だ。元気に生きるんだよ。そういって彼らを見送った。

 

あれから10年以上たち、すっかり虫が苦手になってしまった。カマキリを触れないどころかトンボですらもう無理だ。道端に転がってるセミも言わずもがな、近くを通り過ぎるだけで寒気がする。一体何が変わったんだろう。

 

麦わら帽子をかぶり、虫取り網をもち、首から虫籠を下げたお手本みたいな格好をしたちびっこがセミを追っかけて走っていくのをみて、なんだか懐かしい気持ちになった。

 

僕は大人になったということなのだろうか。でも虫は触れなくとも、虫の不思議には興味がある。それだけじゃない。動物とどうやったら話せるのかだって、火星に住めるかとか、宇宙は何から始まったのかだって、まだまだ世界は分からないことでいっぱいだ。大学の専門の勉強に追われ、そういう知的好奇心を忘れてしまったのかもしれない。

 

 

夏休み子ども科学電話相談に寄せられるそんなちびっこのそんな率直で、科学への期待に満ちた質問は、そんな失いかけていた小さい頃の好奇心を思い出させてくれた。

 

 

 

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今日7月31日は火星が15年ぶりに地球に大接近する。

夜の9時ごろ、南東の低い空に赤く明るい星が見えるはずだ。

日本中のちびっこがきっと見るだろう。

何で火星は赤いのか。近づきすぎて地球とぶつかったりしないのか。そもそもなんで光っているのか。いろんな疑問が空に浮かぶだろう。

僕もそんな純粋な好奇心を抱きながら、

日本中の少年少女と共に、赤い星の輝きをこの目に納めたいと思う。

 

 

ちなみに夏休み子ども科学電話相談は聴き逃し配信もしてくれています。

気になった方はここからぜひ聴いてみてください。

www.nhk.or.jp

 

 

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