意識高い系中島diary

都内在住。意識高い系大学生の見聞録。Twitter ID @Nakajima_IT_bot

60年以上引きこもり世界最長の小説を残したアウトサイダーアーティスト、ヘンリー・ダーガーの孤独な生涯

 

 

1973年、ある老人が静かに息を引き取った。子どもも妻も親戚もいない彼は、誰か近しい者に見守られるでもなくこの世を去った。

 

 

彼と同じアパートに住む住人は、彼の名前の読み方すら知らなかった。

”Henry Darger”をヘンリー・ダーガーと読むのか、ダージャーと読むのか、それすらも分からなかった。ヘンリーはそれほどまで隣人との交流がなく、ほとんど誰とも関わらずにアパートに何十年も住んでいたのだ。

 

 

彼の死後、持ち物を全て捨ててくれと頼まれていた大家は、彼の部屋を片付けたときに衝撃的なものを発見した。

 

 

今まで誰も入ったことがなかった彼の部屋から300枚以上の挿絵と1万5,000ページからなる世界最長の小説が出てきたのだ...

 

 

 

西洋の伝統的な芸術の訓練を受けていない人が作成した作品をアウトサイダーアートという。つまり芸術教育を受けていないアーティストが独自の手法で製作した作品のことを指す。ヘンリー・ダーガーはそのアウトサイダーアーティストの代表とされている人物だ。

 

 

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彼の残した1万5,145ページに上る小説『非現実の王国で』は『グランデリニア』とよばれる、子供奴隷制を持つ軍事国家と、『アビエニア』とよばれるカトリック国家との戦争を描いた物語である。

 

 

アビエニアを率いる7人の少女戦士、ヴィヴィアン姉妹が主人公で、彼女達は何度も敵に捕まるが勇気と機転で抜け出し最後には勝利する。また、ダーガー自身がアビエニア軍の将軍などとして登場しているのが特徴だ。

 

 

同じく長編小説のハリーポッターですら総ページ数は約6000なのでいかに遠大なストーリーかがお分りいただけるだろう。あまりの長さゆえに彼の作品は未だにテキスト全文が刊行されたことはない。

 

 

 

 

彼の生涯は孤独なものだった。

 

 

4歳になる直前に生母と死別、妹は里子に出され、足の不自由な父親に育てられる。のちに8歳の時に父親が体調を崩したため救貧院に入るも友達とうまくコミュニケーションが取れずに退学。12歳の時には感情障害の兆候が現れたとして知的障害児の施設に移送される。そして三年後、施設の中で父親の死を知らされ、ヘンリーは15歳にして天涯孤独の身になってしまう。

 

 

その後、16歳の時に施設を脱走、260kmもの距離を歩いて故郷のシカゴに戻り、掃除人として働き始める。彼はこの仕事を50年以上続けることになる。そして19歳の時に『非現実の王国で』の執筆を開始。執筆は彼の死の半年前まで続けられた。

 

 

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彼の孤独な人生はまだまだ続く。

 

 

33歳の時に協会に養子を申請するも却下。諦めきれずになんども申請するも答えは変わらず、ヘンリーは独りで生きていく覚悟を決める。それ以来数十年、ほとんど誰とも関わらず、掃除人の仕事をする以外は外に出ることすらなく、ひたすら自室で本を書き続けた。

 

 

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そして73歳の時に強制的に仕事を辞めさせられたヘンリーは1972年の暮れ、病気のため救貧院に入る。大家に自室のものは全て捨ててくれと言い残し、翌年1973年4月13日にこの世を去った。

 

 

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ダーガーの作品で特徴的なのがその独特な挿絵だ。300枚を超える挿絵の全てがダーガーの手によって書かれている。

 

 

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巻物になっているものもあり、3m60cmにも及ぶ絵もあった。彼がゴミ捨て場から拾ったとされる雑誌や広告の切り抜きが多用されており、鮮やかな色彩と言い表せない奇妙さが際立っている。

 

 

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主人公や少女は裸で描かれることが多々あり、残酷な拷問や殺戮の対象としてグロテスクに描かれたりした。さらに少女の股間には小さなペニスが描かれており、これはダーガーが女性の裸を見たことがなかったため想像で書いたとされる説があるが、真相は定かではない。

 

 

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ダーガーは自分自身を小説に何度も登場させた。物語の中で彼は子供たちの守護者として活躍し、地位や名誉、賞賛を欲しいがままにした。

 

 

 

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現実の世界では誰からも相手にされず、愛されず、独りで生きてきた彼は、自分の作品『非現実の王国で』をどんなリアルな現実よりも大切に育み、物語の中に自分の居場所を見出したのかもしれない。

 

 

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ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

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