【感想】サヴァン症候群でアスペルガー症候群の青年の自伝「僕には数字が風景に見える」を読んだ

 

この本の著者、ダニエル・タメットはサヴァン症候群アスペルガー症候群を抱えている。そして彼は共感覚という極めて稀な能力を持って生まれた。

 

共感覚

 

それは文字や音に色を感じる能力のことだ。

 

 

ダニエルはこの能力により、数字が色や質感を伴って見えるという。

 

下の画像はダニエルが実際にスケッチした数字のイメージだ。 

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ダニエルにとって1は光り輝き、4は青く折れ曲がったイメージを伴う。

 

そしてダニエルが計算をするとき、例えば53×131とかけ算をするとき、彼の脳内にはこんなイメージが浮かび上がる。

 

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53と131はそれぞれ独自の形と色を持っている。それらが向かい合うと、その間の空間に新たな数字のイメージが浮かび上がる。それがこの計算の答えになるのだ。

 

ダニエルはその才能を活かして2004年に円周率22514桁を暗記し5時間以上かけて暗唱し、ヨーロッパ記録を樹立した。

 

 

ダニエルには円周率20桁がこんな風景に見えている。

 

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彼の才能は言語の分野にも及ぶ。現在彼は母国語である英語のほか、フランス語、フィンランド語、ドイツ語、スペイン語、リトアニア語、ルーマニア語、エストニア語、アイスランド語、ウェールズ語とエスペラント語を含む11ヶ国語を話す事ができる

さらに彼は”Mänti”という新たな人工言語を自ら作成中である。

 

ダニエルの言語の習得スピードは驚異的で、とあるドキュメント番組で一週間でアイスランド語を習得するという企画に参加し、一週間後、アイスランドのテレビ番組に登場し、インタビューに全てアイスランド語で答えるという離れ業をやってのけたのだ。

 

ここまでダニエルの才能について書いてきたが、この本で一番伝えたいことは、彼が才能を活かせるようになるまでの努力の過程だ。

 

ダニエルは1979年にイギリスで生まれた。幼少期から口数が以上に少なく、ずっと1人で一点を見つめていたり、壁に頭を打ち付けていた、いわゆるおかしな子どもだった。これはアスペルガーによるものだが、当時はまだ認知されていない病気だった。そのため学校では変なやつだといじめられ、ダニエルには居場所がなかった。しかしそんな彼を両親が献身的に支え、ダニエルは成長していった。

 

この本が素晴らしい点は、ダニエルが自分の感覚を言葉にして綴っているということだ。アスペルガーなど知的障害や発達障害を抱えている人は、自分の気持ちや感覚を言語化するのが難しい。そのため、サヴァン症候群で共感覚を持っている人がいても、彼らがどのように世界を見ているか知るすべがないのだ。しかしダニエルは両親の支えと仲間との出会いを通じ、人との意思疎通ができるようになった。彼が語る共感覚の世界の見え方は、多くの科学者を魅了している。

 

TEDに彼のスピーチがあるので、ぜひそちらも見ていただきたい。

www.ted.com

 

 

ぼくには数字が風景に見える (講談社文庫)

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