僕らはMAJORに夢中だった

 

 

漫画”MAJOR”の主人公、茂野吾郎は波乱万丈の人生を送ってきた。

 

幼い頃に母親、本田千秋を亡くし、プロ野球選手である父親、茂治と二人で暮らし始めるが、数年後、茂治は試合中に受けたデッドボールが原因で亡くなってしまう。

 

両親を亡くした吾郎は、茂治と恋仲にあった幼稚園の先生、桃子に引き取られる。その後、茂治の親友であった同じくプロ野球選手の茂野英毅と桃子が再婚。吾郎は本田から茂野へと苗字が変わった。

 

そんな彼の夢はメジャーの舞台に立ち、亡き父、茂治を超えるような野球選手になることだった。

 

 

MAJORはそんな吾郎の波乱万丈な野球人生を描いた傑作漫画である。

 

 

 そして僕らは皆、MAJORに夢中だった。

 

 

小学生だった頃、僕らはいつも野球をしていた。

 

 

学校が終われば近所の公園で日が沈むまで球を追いかけ、打ったボールを車にぶつけては走って逃げ、捕まってこっぴどく叱られた。早朝5時に公園に集まり好き放題バッティングをしていたら近所から苦情が来て校長室に呼び出されたこともある。

 

 

土日は少年野球の練習があり、朝から昼まで散々練習したにも関わらず、帰って昼ごはんを食べたらすぐにまた家を飛び出した。グローブを抱えて自転車をすっ飛ばし、日が暮れるまで野球をしたものだった。

 

 

そんな僕らは毎週土曜日、決まって18時前に家に帰った。

 

MAJORが始まるからだ。

 

MAJORは僕らの野球の教科書だったのだ。

 

 

 

 

そんなMAJORには誰もが涙する名シーンがある。

 

  

父茂治が、再びプロの世界に立つシーンである。

 

 

茂治は妻千秋を亡くし、男手一つで吾郎を育てていた。

吾郎は時に優しく、時に厳しく助言をしてくれる父茂治を心から尊敬していた。

しかし茂治は妻の死後、無茶な練習を繰り返し、腰を痛めてしまう。

その後肘まで故障した茂治は引退の危機に瀕し、吾郎はそんなおとさんを首にしないでと、球団まで押しかけ必死に懇願した。

 

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僕らはそんな吾郎の姿に胸を打たれた。おとさん頑張れ。小学生だった僕はもう半泣き状態でテレビにかじりついた。

 

 

その後、投手の道を絶たれた茂治だったが、打者としての再起を目指し、猛練習の末、一軍昇格を果たす。

 

 

しかしそのことを茂治は吾郎に隠していたため、吾郎は、茂治はプロ野球を諦めたものだと勘違いしてしまう。

 

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そんな吾郎に幼稚園の先生だった桃子は茂治が所属する横浜ブルーオーシャンズのナイターゲームのチケットをプレゼント。実はこのチケット、茂治がこっそり吾郎に内緒で桃子に渡したものだった。なぜならその試合に茂治が再び試合にでる可能性があったから-

 

 

球場に来た吾郎だったが、まだ茂治が一軍に上がったことを知らない。

吾郎は茂治が出ない試合なんて見ても意味がないと、家に帰ろうとする。

 

 

しかしその時、球場に響き渡ったのは、他でもない父 本田茂治の代打を告げるアナウンスだった。

 

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テレビの前にいた僕は涙が止まらなかった。吾郎、あんたは知らなかっただろうが、おとさんはあんたの知らないところでずっと練習してたのさ。もう一度、プロの舞台で活躍するおとさんの姿を見せるために...ずっとな... あんたのおとさん、最高にかっこいいぜ...

 

 

 

そしてツーストライク、ワンボールからの4球目。

 

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おとさん打てぇーーっ!

 

 

 

僕は吾郎と一緒に泣きながら叫んだ。

 

 

 

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そして白球は、ライトポールに直撃。

 

 

本田茂治の復活を告げる、代打サヨナラホームランだった。

 

 

MAJORを読んだ、観た人は誰もがこのシーンで涙した。

 

 

おとさんすげえよ。よかったな吾郎。僕らは吾郎と一緒になっておとさんを応援した。

 

 

この後も吾郎は過酷な人生に立ち向かう。小学校、中学校、高校、そしてメジャー。時に仲間とぶつかり合い、立ちはだかるライバルをねじ伏せ、吾郎は成長していった。

 

 

そして吾郎と一緒に、僕らも成長していった。

 

 

今でもMAJORは野球少年のバイブルとして、多くの人に親しまれている。

 

 

 

Major―Dramatic baseball comic (1) (少年サンデーコミックス)

Major―Dramatic baseball comic (1) (少年サンデーコミックス)

 

 

 

 

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